HEALTH
長年、料理の仕事に携わってきた〝ばあば〟のレシピには、知恵と工夫と愛情がいっぱい。あわただしい毎日を送る美ST世代に伝え遺したい、とっておきのひと皿を教えてもらいました。今回は料理研究家の植木もも子さんが作るたっぷりのお豆を使った白和えです。
料理研究家として独立する前、料理専門誌の記者として働いた時期があるという植木さん。「運良く、料理記者の草分けとして知られる岸朝子さんに拾っていただいて。家庭料理から国内外の一流レストランの味、さまざまな食文化を勉強させてもらいました。その後、親の死や自分の心身の不調も経験するなかで、行き着いたのが中医学の世界です。大学で栄養学を学び、記者として美食も知ったからこそ、栄養だけ・美味しいだけではない、自然と調和することで体を養う『薬膳』に惹かれたのだと思います。その世界は知るほどに奥深く、いまも医師や薬剤師の仲間たちと、専門知識をシェアし合いながら勉強を続けています。学びたいという気持ちがあれば、いくつになっても扉は開くものですね」
植木さんの知的好奇心をかき立てる薬膳は、誰もが実践できる〝暮らしの知恵〟でもあります。「薬膳で大切なのは、その時季にもっとも生命力が充実している旬のものや、季節の変化によって生じる不調をサポートしてくれるものを、日々の食事に取り入れることです。そこでこの夏、ぜひ作ってほしいのが、私の大好きな『白和え』。和え衣に使う豆腐は、体の余分な熱を取ったり胃腸を整える素材。白ごまは、腸や皮膚の乾燥を潤してくれます。具材は季節のものなら何でもOK。豆腐はだいたい受け入れてくれます(笑)。美味しく作るコツは、とにかく具材の水けをしっかり切ること。味がちゃんと決まって食感もよくなりますので、ここだけは頑張ってね。自然界の生命を美味しくいただき、自らの生命を養うのが薬膳。何よりも〝自分のために〟楽しみながら作り、味わってください」
管理栄養士、国際中医師、国際中医薬膳管理師。「おいしく、賢く、楽しく、健康に」をモットーに、心身を癒す日々のレシピを発信。薬膳の知恵を生かした著書も多く、近著『薬膳ナムル手帖』(家の光協会)では、驚くほど簡単で美味しい野菜の持ち味を活かす食べ方を多数紹介。手に持っているのは自家製の滋養強壮に役立つ枸杞(くこ)人参酒。
木綿豆腐……1丁(約300g)
そら豆……10本
さやいんげん……20本
モロッコいんげん……5本
枝豆……1つかみ強(さや付きで約100g)
白ごま……大さじ3
A 砂糖(洗双糖)……小さじ1
A 酒……大さじ1
A 淡口醬油……小さじ1/5
A 塩……小さじ1/2
A だし(または湯)……大さじ1
① 豆腐はクッキングペーパーに包み、15〜20分、水切りする。
② そら豆はさやから出し、黒い部分の反対側に浅く切り込みを入れる。枝豆は塩適量(分量外)をまぶし、手で握るようにもむ。
③ 鍋にたっぷりの湯を沸かし、豆を1種類ずつ好みの柔らかさに茹でる。さやいんげん、モロッコいんげん、そら豆、枝豆とアクの少ない順に茹でていくと、湯を替える必要がなく効率的。さやいんげん、モロッコいんげんは、茹であげたら冷水に取り、色鮮やかに。
④ そら豆は、切り込みの部分から中身を押し出す。さやいんげん、モロッコいんげんは、そら豆の大きさ(2〜2.5cmくらい)に合わせて切る。枝豆はさやから出す。それぞれクッキングペーパーなどで水けを取る。
⑤ 鍋に白ごまを入れ、強めの中火で煎る。焦がさないよう鍋を動かしながらじっくり煎り、香りが立ってきたら、指先でつぶしてみて(やけどに気をつけて)、油臭さがなく香ばしさが感じられたらOK。火から下ろす。
⑥ 和え衣を作る。すり鉢に❺の白ごまを入れ、すりこ木で粒がなくなるまですり、Aを加えてすり混ぜる。❶の豆腐の半分を手で潰しながら加え、すりこ木を回しあてながらよく混ぜ、全体が馴染んだら、残りの豆腐も同様に加え、混ぜる。
⑦ 水けをしっかり取った❹の豆を加え、さっくりと混ぜ合わせ、器に盛る。
2022年『美ST』9月号掲載
撮影/須藤敬一 取材/伊藤由起 編集/小澤博子
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