HEALTH
長年、料理の仕事に携わってきた〝ばあば〟のレシピには、知恵と工夫と愛情がいっぱい。あわただしい毎日を送る美ST世代に伝え遺したい、とっておきのひと皿を思い出のエピソードとともに教えてもらいました。今回は料理研究家の脇 雅世さんが作る、夏野菜たっぷりのラタトゥイユ。シンプルな味付けで満足感のある味に仕上げるコツも紹介します。
いつも明るくハツラツとした印象の脇雅世さん。スリムな体型も、若いころと変わっていません。「料理の仕事を40年以上続けてきましたが、いまだに飽きません。『趣味は料理です』と公言しているくらい。だから、ストレスがないことが健康の秘訣かな。運動など特別なことはしていませんが、5年ほど前から、ゆるめの糖質制限を続けています。夫のダイエットのために始めたのですが、私の方が体に合っているみたい。体重は中1のときと同じ50kgをキープできています。これが私にとっていちばん気持ちのいい状態」
そんな超健康体の脇さんが教えてくれたのが、夏野菜たっぷりのラタトゥイユ。これからの季節にぴったりな、南仏風の煮込みです。「レシピの原型はフランス滞在時、友人に教わったもので、材料は野菜とオリーブ油、塩だけ。なのに、どうしてこんなにおいしくなるの? と驚かれるメニューです」
ポイントは、野菜の持つ旨みを凝縮させる方法にあります。「野菜は1種類ずつ、汗をかかせるようにじっくりと炒めます。煮るときも水を使わず、野菜自体が持つ水分で蒸し煮。仕上げに鍋の蓋を開けて水分を飛ばすことで、より凝縮感のある味わいになります。もうひとつ大事なのは、『フランス人になりきる』こと。
つまり、きっちりしすぎないことです。野菜はきれいに切り揃えるより、多少断面が粗いほうが味がしみやすくなります。炒めたり煮たりするときは、あまり混ぜすぎず、焦げない程度にゆったりと見守りましょう。出来立てもいいですが、少し冷めたもの、冷えたものも美味。肉や魚料理の付け合わせ、パスタソースにもなるので、ぜひ多めに作って楽しんでください」
1977年渡仏。「ル・コルドン・ブルーパリ校」や数々のレストランで料理を習得。帰国後は料理研究家として各種メディアで活躍。1981年から10年間、カーレース「ル・マン」にマツダ・レーシングチームの料理長として参画。東京・神楽坂で主宰する料理教室は、35年以上続いている。次女で料理家の加藤巴里さんとのオンライン料理サロンも好評。著書に『いちばん親切でおいしい低温調理器レシピ』(世界文化社)ほか多数。
ズッキーニ……1~2本
赤パプリカ………1個
玉ねぎ……小1個
茄子………3本
トマト(完熟したもの)……2個
にんにく……2片
ローリエ……1枚
オリーブ油……適量
塩……小さじ1強
① 野菜はそれぞれ約2.5cm角の大きさに切る。
※まな板を使わずに野菜を手に持ち、ペティナイフで切っていくと、断面が適度に粗くなり、味がよくなじむ。
② 糖分が少ない順に、1を1種類ずつフライパンで炒め、煮込み用の厚手の鍋に入れていく。まずはズッキーニから。フライパンにオリーブ油を熱し、ズッキーニとローリエを中火でじっくりと炒め、薄く焼き色がついてきたら鍋に移す(炒め油はフライパンに残す)。
③ 続いて、赤パプリカ、玉ねぎ、茄子の順に、必要に応じて油を足して炒め、煮込み鍋に移す。茄子は特に油を吸うので、多めの油(大さじ2くらい)で炒める。
④ 鍋に塩を振り入れ、皮と芯を取ったにんにく、湯むきしてざく切りにしたトマトも加え、蓋をして弱めの中火で蒸し煮にする。
※トマトは今回、芯をくり抜いて冷凍しておいたものを使用。水にさらして皮を取り、丸ごと鍋に加えてそのまま煮崩す。
⑤ 煮立ってきたら中火にし、ときどき上下を混ぜながら、15分ほど蒸し煮にする。途中、にんにくがやわらかくなったら、ヘラなどで潰して混ぜ合わせる。
⑥ 野菜の水けが出てきたら蓋を取り、水分を飛ばしながら5~10分煮る。水分がほとんどなくなり、とろりとしたら出来上がり(焦がさないように注意)。味を見て足りなければ塩で調味する。
2022年『美ST』8月号掲載
撮影/須藤敬一 取材/伊藤由起 編集/小澤博子
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