HEALTH
何かと体調を崩しやすい季節の変わり目は、免疫力が低下しやすくなっています。疲労感や手足の冷え、便秘や下痢、風邪を引きやすいなどの体調不良は、免疫力低下のサインかもしれません。そこで見直したいのが、毎日の食事。免疫細胞を始めとするすべての細胞は、日々の食事によって作られます。免疫力に関わる栄養素と、その摂り方のコツについて、管理栄養士の清水加奈子さんに聞きました。

免疫力とは、読んで字のごとく、「疫(=病気)」を「免」れる力のこと。もう少し詳しく言うと、「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類が働いて、体を守っています。体に侵入したウイルスや細菌などの病原体に反応し、攻撃を仕掛けて病気にかかりにくく・重症化を防ぎ・治りやすくするのが「自然免疫」。人が生まれながらに持っている免疫です。一方、自然免疫が対処できなかった小さな病原体や、細胞に侵入してしまった病原体を記憶し、戦うのが「獲得免疫」。感染することで得られる免疫です。ワクチンは、この獲得免疫の機能を利用したものです。
免疫を具体的に担っているのは、免疫細胞。特に、白血球の成分である好中球、マクロファージ、NK細胞、樹状細胞、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、B細胞などが中心的な役割を果たし、ウイルスや細菌の侵入を知らせたり、抗体を作ったり攻撃を仕掛けたりして、互いに情報を交換し助け合いながら私たちの体を守っています。免疫細胞には、血液やリンパにのって全身をパトロールしながら異物を排除しようとするもの、腸管や、目、鼻、喉などの粘膜で病原体の侵入を防ぐものがあります。
免疫細胞を元気に働かせるためには、5大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル)を偏りなく摂れる、バランスのいい食事が大切です。食材ひとつひとつの栄養を調べるのは面倒でも、和食の一汁三菜(主食+汁物、主菜、副菜×2)をイメージした献立を心がけることで、必要な栄養をバランスよく摂れるはず。ただし、インスタント食品や加工食品では、糖分や塩分、脂肪分などが過剰になりやすく、ビタミン、ミネラルは摂りにくいので、控えめにしましょう。
もうひとつ大事なのは、食事を美味しく・楽しみながら食べること。免疫力を下げる要因の代表格はストレスですから、いくら体に良いといわれるものでも、嫌いなものを無理に食べる必要はありません。食事にしても運動にしても、無理をして挫折し、余計なストレスを溜めるより、小さくてもできることを日々積み重ねていきましょう。

国際中医薬膳師、国際中医師。女子栄養大学短期大学部食物栄養学科卒業後、食品メーカーの研究職などを経て独立。栄養学・中医学・薬膳の専門知識を持つフードコーディネーターとして、幅広く活躍中。
免疫力を高める(低下させない、バランスを整える)ために必要な栄養素は、「腸内環境を調えるもの」「免疫細胞に関わるもの」「抗酸化作用のあるもの」の3つに大別できます。これを踏まえて食事を取ることで、効率よく免疫力アップを狙えます。

免疫細胞の約7割は腸にあると言われており、腸内環境が悪化すると免疫力も低下してしまいます。発酵食品+食物繊維を主とする“腸活”で、腸内細菌のバランスを調えましょう。発酵食品に多く含まれるプロバイオティクス(腸内環境のバランスを改善する微生物)の乳酸菌やビフィズス菌は、そのエサとなるオリゴ糖や食物繊維と一緒に摂るとより効果が期待できます。納豆に含まれる納豆菌、味噌に含まれる麹菌なども、プロバイオティクスの一種。ちなみに、市販のヨーグルトに含まれる乳酸菌やビフィズス菌にはさまざまな種類があり、人によって合うものが異なります。どれが自分の腸にフィットするか一定期間食べて試して経過をみるか、数種類ブレンドして食べるのがおすすめです。食物繊維は、なるべくいろいろな食品から、水溶性と不溶性の両方を摂るよう心がけましょう。
<腸内環境の改善に役立つ食材の例>
●プロバイオティクス>>ヨーグルト、チーズ、納豆、ぬか漬け、キムチ、味噌など
●オリゴ糖>>玉ねぎ、ごぼう、アスパラガス、バナナ、大豆、とうもろこし、はちみつなど
●食物繊維>>きのこ類、豆類、大豆・大豆加工食品、穀類、いも類、果物類、海藻類、野菜類など

たんぱく質は体を構成するさまざまな組織の材料。免疫細胞の合成、活性化にも関わっており、不足すると免疫力の低下を招きます。良質なたんぱく質を含む肉、魚介、卵、大豆製品から、バランスよく摂るようにしましょう。摂取量の目安は「1食につき(肉、魚介、卵、大豆製品合わせて)手のひらに乗るサイズのたんぱく質のおかず」。加えて、牛乳、乳製品も1日1回は摂るのがおすすめです。きのこに含まれるβ-グルカンは、水溶性食物繊維の一種。マクロファージ(がん細胞などを攻撃するリンパ球や食細胞)を刺激して、免疫力を強化します。ちなみに、まいたけやしいたけに多く含まれるビタミンDには免疫調整機能があり、感染症のリスク低減が期待できます。
<免疫細胞に関わる食材の例>
●たんぱく質>>肉(牛赤身、豚ヒレ、鶏ムネなど脂肪分の少ないものベター)、魚介(サケ、カツオ、イワシ、エビなど)、卵、大豆、大豆加工品(豆腐、納豆、豆乳)、牛乳、乳製品など
●β-グルカン>>きのこ類(まいたけ、ひらたけ、しいたけ、エリンギ、なめこ)、メシマコブ、オーツ麦、大麦など

免疫細胞が働く際に生じる活性酸素は、病気や免疫細胞の老化のもと。体を酸化から守る抗酸化物質も必要です。緑黄色野菜などに含まれるビタミンA・C・Eは、抗酸化ビタミンの代表格。脂溶性のビタミンEが細胞膜に働きかけ、AとCがそれをサポートするため、一緒に摂るとよりパワーを発揮します。ビタミンA(βカロテン)は、油脂と一緒に摂ると吸収率がアップ。ビタミンCは水溶性で熱に弱いため、なるべくそのまま食べるのが効果的。旬のものは含有量が多くなります。ポリフェノールは、植物が紫外線や害虫から身を守るために作り出す物質。細胞を錆びつかせる活性酸素を除去し、健康的な免疫力を保つのに役立ちます。カロテノイド、アントシアニン、ルチンなど、さまざまな種類があり、数種類を重ねて摂ることで相乗効果が期待できます。ポリフェノールは皮や皮と身の間(色素)、アク、香り成分などに多く含まれるため、なるべく皮を剥かず、水に長時間さらさずに使うのがおすすめです。
<抗酸化作用のある食材の例>
●ビタミンA>>レバー、にんじん、かぼちゃ、ほうれん草、モロヘイヤ、卵黄、うなぎ、バターなど
●ビタミンC>>パプリカ、ブロッコリー、ケール、モロヘイヤ、キウイフルーツ、柿、じゃがいもなど
●ビタミンE>>アーモンドなどのナッツ類、ひまわり油、オリーブ油、かぼちゃ、アボカド、大豆など
●ポリフェノールを含むもの>>そば(ルチン)、野菜・果物(アントシアニン、カロテノイドなど)、緑茶(カテキン)、ココア(カカオポリフェノール)、赤ワイン(赤ワインポリフェノール)など
免疫力の基本、食事との関係がわかったら、いよいよ実践。免疫力アップに関わる栄養をまんべんなく摂れるレシピをご紹介します。食欲が落ちやすいこれからの季節にも美味しく食べられるものばかり。しっかり食べて免疫力を底上げしましょう。

高たんぱく・低脂肪の優秀食材、鶏むね肉をレンジでふっくらと蒸し、緑黄色野菜たっぷりのラタトゥイユをソース兼付け合わせに。ビタミンA・C・Eの同時摂取で吸収力を高めます。レンジ蒸し鶏は冷蔵庫で約4日、ラタトゥイユは冷蔵庫で約5日保存可能です。
【材料】
<レンジ蒸し鶏/作りやすい分量>
●鶏むね肉・・・1枚(300g)
●酒・・・大さじ1
A ●塩・・・3g(肉に対し1%)
●砂糖・・・小さじ1
<ラタトゥイユ/作りやすい分量>
●かぼちゃ・・・1/6個(200g)
●ズッキーニ・・・1本(200g)
●玉ねぎ・・・1個(200g)
●トマト・・・2個(300g)
●赤パプリカ・・・1個(150g)
●にんにく・・・1かけ
●塩・・・小さじ1
●こしょう・・・少々
●ローリエ・・・1枚
●オリーブ油・・・大さじ3
●砂糖・・・少々
●フレッシュバジル・・・適量
●パルメザンチーズ・・・適量
【作り方】
①レンジ蒸し鶏を作る。鶏肉は皮をつけたままフォークで数カ所穴を空ける。
②耐熱ボウルに❶を入れ両面にAをすり込む。酒をかけて皮目を下にし、ふんわりラップをかけて600wのレンジで2分加熱し、裏返してさらに2分加熱。そのまま粗熱が冷めるまで置き、余熱で火を通す。
③ラタトゥイユを作る。野菜は1cm角に切り、にんにくはつぶす。
④鍋にオリーブ油大さじ1を熱し、かぼちゃを加えて2~3分、中火で炒めて取り出す。同じ鍋にオリーブ油大さじ2とにんにく、ズッキーニ、たまねぎを加え、しんなりしたらパプリカ、トマト、塩、こしょう、砂糖、ローリエを加えて混ぜ、蓋をして弱めの中火で10分蒸し煮する。かぼちゃを戻し入れ、蓋をせずに5分煮る。
⑤❷を食べやすい大きさに切って器に盛り、❹を適量添え、バジルを手でちぎって散らし、パルメザンチーズをかける。

食物繊維(水溶性・不溶性)たっぷりのきのこに、プロバイオティクスのヨーグルト、味噌を合わせた、爽やかな口当たりの和え物。乳酸菌と、そのエサになる食物繊維、オリゴ糖を一緒に摂れる腸活メニューです。ほのかな青じそ(緑黄色野菜)の香りが食欲をそそります。
【材料(2人分)】
●しめじ・・・50g
●まいたけ・・・50g
●しいたけ・・・50g
●エリンギ・・・50g
●青じそ・・・4枚
●生姜・・・1/2かけ
●蒸し大豆・・・50g
●ヨーグルト・・・150g
A●味噌・・・大さじ1/2
●練りからし・・・小さじ1/4
●ごま油・・・大さじ1
●醬油・・・小さじ1
【作り方】
①ボウルにざる、キッチンペーパーを重ね、ヨーグルトを入れ、ラップをし冷蔵庫でひと晩水切りする。
②しめじ、まいたけは手でほぐす。しいたけ、エリンギは軸や石づきを切り、しめじと同じ大きさに切る。青じそ、生姜をみじん切りにする。
③フライパンにごま油を熱し、強火で❷のきのこを焼く。焼き色がついたら裏面も焼き、生姜、蒸し大豆、醤油を加えてさっと混ぜ、火から下ろして粗熱を取る。
④❶の水切りヨーグルトとA、青じそを混ぜ合わせ、❸のきのこを加えて和え、冷蔵庫で30分ほどなじませる。

ポリフェノールの一種、ルチンを含む蕎麦に、たんぱく源となる発酵食品の納豆、ビタミン豊富な緑黄色野菜をたっぷりと使った、サラダ風の和え麺です。薬味のピーナッツも実はたんぱく質、ビタミンEを含む優秀食材。ベトナム風の甘酸っぱいソースが食欲をそそります。
【材料(1人分)】
●蕎麦(乾)・・・80g
●ごま油・・・小さじ1
●ひきわり納豆・・・1パック
●にんじん・・・30g
●紫キャベツ・・・30g
●黄パプリカ・・・30g
●パクチー・・・20g
●アルファルファ・・・20g
●ピーナッツ(バタピー)・・・10g
●桜えび・・・2g
A●ナンプラー・・・小さじ1
●砂糖・・・小さじ1
●レモン汁・・・小さじ1
●水・・・小さじ1
●おろしにんにく・・・少々
●輪切り唐辛子・・・1/2本分
【作り方】
①にんじん、紫キャベツ、パプリカは千切り、パクチーはざく切り、ピーナッツと桜海老は粗みじんに切る。
②Aを混ぜ合わせる。納豆は付属のたれ半量と辛子を加え、粘りが出るまで混ぜる。
③蕎麦は袋の表示通り茹で、冷水でしめて水気を切り、ごま油をまぶす。
④器の中央に❸の蕎麦を盛り、まわりに野菜、納豆、ピーナッツ、桜えびをのせ、Aをかけて食べる。
免疫力は本来、誰の体にも備わっている機能ですが、ちょっとしたことで上がったり下がったりします。特に、生活習慣やコロナ禍のストレスを感じている人は要注意。油断したところでウイルスや細菌にやられてしまわないよう、栄養バランスの取れた食事で免疫力をベースアップしましょう。もちろん、適度な運動、質のいい睡眠、ストレスケアもお忘れなく。
撮影/相澤琢磨 フードスタイリング・レシピ/植田有香子 取材/伊藤由起 編集/永見 理
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