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子供から性自認がマイノリティだとカミングアウトされたら、親はどうあるべき…?LGBTQという言葉が一般的になった今、ある母と息子の体験談を通じて親としてどうあるべきかを考えました。
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おくら 『うちの息子はたぶんゲイ』 (スクウェア・エニックス)
©Okura/SQUARE ENIX
著者おくらさんに、母へ贈ったことを報告し親交があるそう。
自分の特性を自分で意識したのは高校を卒業して留学をしてから。留学先のスペインやフランスでLGBTQ+の方々が自由に街角で手を繫いだりハグしたりしているのを見て、少しずつ自分のマイノリティ性を認めることができた感じですね。公の場所でも、同性のパートナー同士が異性のそれと変わらぬ扱いになっていることに衝撃を受けました。帰国して、日本で唯一のゲイコンテストであるMr Gay Japanにトライすることを決め、その前に自分で伝えたいと、母を誘い石垣島へ旅行しました。でもこっぱずかしくなって結局そこでは言えなかったんですよ。そこで母の誕生日に、友達が勧めてくれた漫画『うちの息子はたぶんゲイ』に「タイトル通りです。」と手紙を添えて送りました。母からは数日後に返事の手紙がきて、いざ読む前にはドキドキしたのを覚えています。8割9割わかっているだろうと思っていましたが不安もありました。それからは、性的マイノリティであることを公表してさまざまな取材を受けるなかで、今回のように母も一緒に体験を話してくれる機会が増えました。僕はカミングアウトすることが正義だとは思っていません。打ち明けて、相手は青天の霹靂で、関係がこじれて苦しむ例も少なからずあります。その人その人が心地いい道を自由に選択できる世の中になってほしいです。人権意識が低いと言われる日本ですが、学校に呼ばれて講演をしたり、バーのお客さんとの触れ合いの中であっけらかんと個性を受け入れる若い世代の感性に感動することもしばしば。これから先、10年20年後の日本は今よりも生きやすい優しい世界になっているのではと期待しています。
田中愛生さん 山口県在住 35歳
BAR「田中ゲイ企画」オーナー
ミスターゲイジャパン2022グランプリ
田中直子さん
東京都在住 60歳
家族構成: 夫、長男(愛生さん)、次男
幼稚園の頃から何だか違うなとは感じていました。優しくて女の子と自然に仲良くなれる子だったんですよね。私自身も中性的な部分があり理解しやすかったのかもしれません。打ち明けてくれた時も「知ってたよ」という感覚で、伝えてくれたことに安心しました。この子は自分で自分を認められたんだと思ったんです。それまではこちらからは聞かないことにしていました。親にそういうことを伝えるのってお互い気恥ずかしい部分がありますよね。旅行に誘ってくれた時、実は機会を窺っていたとは全く気付かずハイテンションで思いきり満喫してしまいました。誕生日に漫画と手紙が送られてきた時は「私は自分の産んだ子以上に可愛い存在がこの世にあるとは思えない」という気持ちを伝えたくなって、あえて手紙で返しました。今も大切に持っていてくれるようで、良かったと思っています。年の離れた次男はお兄ちゃんが大好きで、父は近すぎず遠すぎずの距離感で見守っているという家族です。
二次性徴が始まる思春期は親から与えられた価値観をいったん壊し、再構築して生き方を確立する大切な時期。そこに性別の悩みが加わると自分を肯定することが難しくなり、辛い思いをすることも。まず親は人生の先輩として子供が自分らしく生きる努力する姿を温かく見守って。相談されたらその辛さを受け止め、発する言葉に耳を傾けましょう。子供にとってその言葉は生き方を模索する中で出合い、見出した大切なものなのです。ぜひ親はその言葉をむやみに言い換えたり、勝手に解釈して性急な評価を下したりしないでください。例えば「自分は女の子かもしれない」と言われたら、「それって性同一性障害ってこと?」「トランスジェンダーなの?」などと別の言葉に言い換えるよりも「そうなんだね。お母さんもあなたを女の子かもしれないと思っていたよ」と言葉をそのまま使って返してあげた方が、気持ちを分かってもらえたと感じてくれるでしょう。親は常に子供の一番の味方になって。文部科学省から配慮に関する通達もあり、教育環境にも変化が起きています。困りごとがあったら専門家に相談を。
ちあきクリニック院長 医学博士・精神保健指定医・精神科専門医日本GI(性別不合)学会認定医 松永千秋先生
自身が性別の問題で悩んだことから精神科医に。2012年開業のクリニックでは積極的に性同一性障害/性別不合の治療にも取り組んでいる。日本GI(性別不合)学会理事。
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2025年『美ST』3月号掲載
取材/佐藤理保子 写真/PIXTA
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