中谷美紀さん「悩むことは決してネガティブなことではありません」【Q＆A特別インタビュー】

2拠点生活も9年目、凜とした美しさと研ぎ澄まされた感性にさらに磨きがかかったような中谷美紀さん。今回は同世代でもある読者から中谷さんへのご質問にお答えいただく形でインタビュー。「自信を持つ方法は？」「心を美しく保つ方法は？」など時に共感しながらご自身の経験も交えて真摯にお答えいただきました。人生後半戦を、少しでも晴れやかに生きるためのヒントを見つけてください！

A. 優しい方なのでは？自分にも周りにも、期待しすぎずに。

一歩踏み出す時の躊躇や自己肯定感の低さは日本人特性のようです。もともとセロトニン産出量が少ない日本人は、不安やストレスを感じやすい傾向があるとも言われますよね。私自身も新たな役に臨む時には毎度自信がないのです。でも、自分が大した人間ではないことはわかっているので、期待しても仕方ない、とどこか諦めているところもあり「まあ何とかなるわ」と思ったり……。そんな、どこかいい加減なところもあるようです（笑）。

きっと人に優しく自分自身に厳しい方だからこそ、自信がないと悩まれるのでしょう。美ST世代の方々は年齢を重ねるなかで、良いことも悪いことも経験されているでしょうし、その全てがご自身の年輪になっているはず。そして悩むことは決してネガティブなことではないはず。悩んだ経験によって他人の痛みも理解できるようになり、人に優しくなれるのだとも思います。むしろ「自分は無敵でナンバーワンだ！」などと傍若無人に主張するような人にならなくてよかったのではないでしょうか（笑）。

それでも心が晴れないならば、おひさまの光を浴びながら公園を散歩したら元気になれるのでは？と思います。そして、自分で自分を思いっきり褒める！人目を気にしたり、誰かの評価に頼るのではなく、自らで自分を大切にできたら、一歩前に出る勇気や自信が出てくるのでは、と思います。

A. 良質な睡眠でしょうか。心にゆとりを。

まずは心の美しい方と接することが第一です。そして美しいものにたくさん触れること。機会あるごとに美術や音楽に触れることで心がギスギスしない環境を保つことが大切。ヨーロッパに住んで良かったことの一つは、芸術へのアクセスハードルが低いので日常的に気軽にアートに触れられることです。

おいしいものをいただくことも大事ですね。人間は忙しくて自らを大切にできない状態が続くと心がギスギスしてしまうものだと思うので、自然に触れてみるなど、時には逃げ道を許すことも心がけてください。

そしてしっかりと眠ること。私は状況が許す時には10時間睡眠です（笑）。上質な睡眠は体も心も整えてくれる最良の方法だと思います。

A. 自分の世界を持つ人。

流行に流されずに、自分自身が大事にする世界を持っている人は美しいと感じます。周りばかり見ていると、人と比べたり自分が見えなくなってしまうので、まずは自分の「好き」を見つめてはいかがでしょう。

すでに故人ですが、ドイツのコンテンポラリーダンスの振り付け師、舞踏家でもあるピナ・バウシュさん、モダニズムの陶芸家、ルーシー・リーさんなど。分野を問わず、ご自身の美意識を持って生きてらっしゃる方は素敵だなと思いますし、「美しい人」として憧れております。

2025年『美ST』9月号掲載
撮影／藤森星児　ヘア・メイク／下田英里　スタイリスト／田中雅美　取材／森島千鶴子