PEOPLE
連載史上最高齢!ファッションデザイナーとして89歳の今も現役で活躍するコシノヒロコさん。小さい時は絵描きになりたかったそうで、現在は東京都現代美術館で個展を開催中。相変わらずのカッコよさに、勇気と元気をもらいました。
《Profile》
1937年大阪府生まれ。’78年に日本人として初めてローマのアルタ・モーダに参加し、その後パリ、上海など世界各地でコレクションを発表。「HIROKO KOSHINO」をはじめとする複数ブランドのデザインを手がけるほか、近年はアーティストとしての活動にも注力し、2013年に作品発表の拠点としてKHギャラリー芦屋を開廊。
89歳の今も、ファッションデザイナーとして現役で働いています。だから健康管理は必須。10年前は食べたり飲んだりし放題でしたが、80歳の声を聞いてからすごく考えるようになりました。ちょうどそのころ、台湾で講演会をしたときに風景が斜めに見えて気持ちが悪くなり、帰国後に病院に行くと、血圧が180を超えていました。血圧が高いと多方面にわたって問題がぶわっと起こってくるので、血圧系は虎の門病院、もともと弱い呼吸器系は京都大学病院と2つの病院をかけ持ちして、3カ月に一度必ず検査を受けています。というのも、元気だった母が92歳で脳梗塞で突然亡くなったんです。まったく検査をしない人で、もしケアをしていればきっと100歳以上生きていたと思うんです。私はそういう死に方は絶対にしたくない。自然に老衰で死にたい。110歳くらいまで生きたいので、ケアは怠りません。
食事は1日2食。絶対暴飲暴食はしません。朝はプロテインをきちんと飲んで、ランチをしっかり食べた日は夜をごく軽く、夜に会食が入ったら、その日の昼は軽くしてバランスをとっています。
運動は週2回1時間、ジムでトレーナーについて筋トレをしています。私が最高齢の生徒だそうですが、もう8年ほど続いています。
ありがたいことに大病はしていませんが、腰が悪く、脊柱管狭窄症、すべり症、ヘルニアの三重苦で歩けなくなり、19年前に手術をしたの。大好きなゴルフが半年できなくて、入院して寝たきりの間にイメージトレーニングをしていたら、回復後は悪い癖だけが取れ、以前よりいいスコアを出せるようになりました。体が動かないからとあきらめず、イメージするだけで結果はついてくる。ピンチの時こそチャンスにつながると思います。
これは人生にも言えること。23歳で結婚して、2人の娘に恵まれましたが、結婚生活は全然幸せじゃなく、30代は前向きになれなかった。離婚したのが39歳。でも「何もかも失った」ではなく、「よーし、これからが私の人生」と思っちゃうわけ。そこから楽しくて楽しくて。離婚も逆境だったけど、「今が最悪」だとしたら、それは「次の幸せ」の始まりだと考え方を変えました。
だから40代からは恋をたくさんしましたね。最後の恋は70歳から10年間くらいお付き合いした人と。でももう恋はしたくない。好きになってしまったら、彼の一挙手一投足すべてが気になるでしょ。「今何してるの?」とか「なんでこの時間にいないの?」とかバカみたいなこと聞いちゃうのよ。私、もうそれは絶対やりたくないのよね(笑)。
仕事でも数限りなく、年に1回は逆境が訪れました。その度に乗り越えてきた、その積み重ねで今があります。逆境がなければ、今はないでしょう。例えばバブル時は会社の存亡の危機。生き残るために知恵を働かせて実行に移し、バブル後に状況が好転しました。最悪な状態に陥ったら、それを嘆いていてもしょうがない。何としても生きていかなきゃいけないわけだから、考えて考えて考え抜くんです。そうすると思わぬ知恵を思いつく。そんなことは不可能よとネガティブに捉えず、その知恵の良し悪しも考えず、実行あるのみ。それでうまくいった経験が、私には数えきれないほどあります。落ち込んでる暇はなかったですね。
5月26日から、東京都現代美術館で『(UN)KNOWN HIROKO KOSHINOー新説/真説 コシノヒロコー』を開催します。3歳から絵を描き始め、絵描きになりたかったのですが、家が洋裁店で私は長女だから、ファッションデザイナーの道へ。絵は趣味ですが、これまで2,700点描いてきました。長年、平日は東京、週末は芦屋の家で過ごし、絵は芦屋で描くことが多いです。描き始めると、子どもが遊んでいるみたいに夢中になって、予想以上に大作ができたり、逆に全然ダメだったり。でもダメだと思った作品も、数日置いてやり直したりしています。
作風は具体的なモチーフも持たないアブストラクトが多いですが、ウイーンでクリムトに影響され、金を使った絵も多いです。私はデザイナーなので、ベルベットなど洋服の布をキャンバスに貼り、その上から色を塗ったりすることも。
今回はコレクション作品のほか、墨絵や油彩など、およそ150点のアート作品を並べます。でも、「私の作品はこうよ」という展覧会ではなく、20年後を見据えて、私を知らない子どもたちが「こんな大人がいるんだ」って感動してくれればそれでいいんです。次の世代につなげていくことが私の夢ですね。
41歳でローマのオートクチュール・コレクション「アルタ・モーダ」に日本人で初めて参加。39歳で離婚して、娘2人を育てながらの40代は、仕事も恋も充実していました。
「今日が一番若い」と思っていれば、やりたいことを何だってやれるわよ。「もう年だから」なんて言わないで、毎日「今日が一番若い」と言い聞かせて明日につないでいくんです。そうすればきっと人生が輝いて見えます。
『(UN)KNOWN HIROKO KOSHINO ー新説/真説 コシノヒロコー』 東京都現代美術館 企画展示室B2
2026年5月26日(火)~7月26日(日)
撮影/大森忠明 取材/安田真里 編集/和田紀子
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