「苦労は語らず」デザイナー森英恵さんから森泉さんへの教え

ヘルシーで朗らかな笑顔がトレードマークの森泉さん。動物やDIY好きで知られ、プライベートでは4歳になるお嬢さんのママ。美STには初登場の彼女が、今年8月に亡くなった祖母・森英恵氏から受け継いだ教えなどを語ってくれました。自然体でざっくばらんなお話は、ストレートに私たちの心に響きます。

ロングインタビュー前編は、祖母・森英恵氏の教えで今も生きていることを語ってくれました。

「苦労は語らず」「強くなりすぎないで」…大人になるにつれ刺さる、祖母・森英恵からの教え

お話を伺ったのは…森泉さん(40歳)
私はもともと、根っからのポジティブだったわけじゃないんです。イヤなことがあると周囲に話して発散していた時もあります。でも、ある時から、あえてイヤな気分を外に出す必要もないなと思い始めました。
それはなぜか?自分でよく考えてみると、ママモリ(ファッションデザイナーの故・森英恵氏)が愚痴や泣き言を一切言わない人だったからだ、と気づきました。

1960年代、まだ女性の社会進出が今ほどではなかった時代に、日本人デザイナーとしていち早く海外進出して、東洋人として初めてパリでオートクチュールのデザイナーになって。アジア人として、そして女性として、結構辛いことがいっぱいあったと思うんですけど、私はほとんど苦労話を聞いたことがないんです。
高校生の時に海外留学から帰ってきて、ママモリと一緒に過ごす時間が多かった時期に一度、そのことを不思議に思って「どうして言わないの?」「みんなにどれだけ苦労したかを知ってほしくないの?」って聞いたことがあるんです。ママモリの答えは「私はキレイなもの、美しいものを作っているから、イヤなことをあんまり口に出したくないの」というものでした。

その時は自分が10代だったので「へえ、そうなんだ」くらいに受け止めていたんですが、大人になって仕事をするようになってから、やっとその言葉が持つ意味が想像できるようになりました。
祖母は、美しいものにリアルな苦労話や愚痴めいた言葉は似合わないと思っていたのかもしれないし、口に出して発散するよりも、自分の内側にとどめておくことで創作物のイメージを崩さずにいたかったのかもしれない。もしくは、口に出す言葉は自分も聞いているわけだから、それが自分の耳や頭に入って美の創作の邪魔になることを避けたかったのかもしれない。
どれが正解なのかはわからないですが、いずれにしても、それまではネガティブな思いは発散するほうがストレス解消にいいと思っていた私にとっては「あえてイヤなことは口にしない」という対処法があるということが衝撃でした。
他に覚えているママモリの言葉ですか?「あんまり強くなりすぎてはダメよ」というのも覚えています。
海外でデザイナーとして生きて、差別とかもあった時代。「強くなんないとできなくない?」ってその時は感じていたんですが、きっとママモリは「強くなりすぎちゃうと、いざ何かあった時に折れちゃうでしょ。だから優しさやしなやかさを残して、なんでも許していけるよう柔らかさを持ちなさい」って言いたかったんだろうな。

この言葉も、聞いた瞬間はピンと来なくて、後になってからじわじわとその言葉の意味を自分なりに解釈するようになりました。大人になるにつれて、どんどん理解が深まっている気がします。
あんまりちゃんとした仕事の相談はしたことがなかったんですが、節目節目で言ってくれた言葉が後になって自分の中で熟して、意味を持ち出しているような。まるで祖母が蒔いてくれた想いの種が、私の内面の成長みたいなものと一緒に育って、すごくポジティブな花を開かせてくれているような、そんな気がしているんです。

国際結婚で森家に嫁いだ母から学ぶ「もう忘れちゃった♪」精神

苦労を口にするのを聞いたことがない、という意味では、私の母もそうです。
いまほど国際結婚が当たり前ではない時代にイタリア系のアメリカ人として森家にはいって、5人の子どもを育てました。「いろいろ大変だったでしょ?」と聞くんですけど、「なんかもう忘れちゃった」って笑うんですよ。本当に「あのときは辛かった」「苦しかった」なんて言ってることを聞いたことが1回もないの。苦労しなかったわけはないのに。だから、忘れるって能力もすごく大事なんだなと思って、私も極力根に持たないで、流すようにしています。
愚痴ってほっとくとどんどん出てきちゃう。言い出すとキリがなくてそれが普通になってきちゃうと、さらにどんどん探しちゃう。そうすると、聞いてる人もネガティブな気分に引っ張られちゃうでしょ。負の気分がループしちゃって、よくないんじゃないかと感じるんです。

居心地のいい空間や状況も自分で作る、つまり「環境もDIY!」。それが私の自愛ビューティ

とはいえ、私も怒ることはあります(笑)。でも瞬間湯沸かし器みたいにポンって火がつくけど、すぐにシューって消えちゃうの。焚き火みたいにずっと燃えてない感じ。怒りのエネルギーは省エネタイプですね。

ペットが亡くなる時は落ち込んで立ち直れなくなることもあります。けれど、やるだけのことをやって、その結果なら、もうしょうがないかなと考えて立ち直るようにしています。

やっぱり自分自身がご機嫌よく笑顔で過ごせていることが生きる原動力。そのために、私の場合は「本当に好きなものに囲まれている」状態を見つけることに全力を注いでいます。自家発電上手になることを目指す、っていうのかな。自分が好きなものとか、好みのものを探すことは、人生ですごく幸せを感じられる時間だと思います。それがモノだろうが、人や動物だろうが、何でもいいんです。

私はDIYが好きなんですが、キッカケは子どもの頃、うちのリビングが朝起きたらオレンジに変わっていたこと。うちのリビングってもともとは真っ白だったんです。どうやらママが夜な夜なペンキ塗っていたらしくて、「なんか、飽きちゃったから塗っちゃった!」みたいなノリで。中学生の時も、子供部屋のピンクの壁が幼く感じてイヤだなと思っていたら、大人っぽいシックな色に塗り替えてくれたり。
そうやって、気分によって気軽に壁を塗って自分の好みに変えていくっていうのが小さい頃から身近なことだったので、自然と私も影響されて、東急ハンズに毎日通うように!当時はこんなに豊富にホームセンターなんてありませんでしたから。そこで材料を買って作ったものは、今でも大事な宝物になっていますね。
考えてみると、自分がいる空間を自分好みにかえるというDIYの精神は、部屋や家だけじゃなく、環境に関してもやっているのかもしれません。

今、4歳の娘を育てていますが、子育ても一人だけでやろうとせずに、なるべく多くの人に頼って甘えて、巻き込んでやらせていただいています。そのほうが自分も苦しくないし、何よりも娘のためにもいいかなと思う。
自分にベストな環境も、どんどん好きなように動いて周囲に働きかけて作っていっていい。私はそう思います。
《森泉さんプロフィール》
1982年10月18日、東京都生まれ。ファッションデザイナー・故 森英恵氏の孫として生まれ、19歳でモデルデビュー。バラエティー番組でDIYの腕前を披露し人気を博すなど、現在はタレントとしても幅広く活躍中。
次回は「人はみんな考えが違う。夫とも対話を重ねることで理解し、歩み寄り、助け合っていける」など、ご家族の話を語ってくれました。

森泉さん「夫婦といえども価値観は違う。だからこそ面白い!」

【森泉さん】40代になっても、若々しい笑顔あふれる!特別カット集

Web特別カット集
2022年11月30日
《衣装クレジット》
ジャケット¥49,500(セオリー/リンク・セオリー・ジャパン)Tシャツ¥11,000(オーシバル/ビショップ)デニム¥37,400(ザ ハンサム/UTS PR)

《お問い合わせ先》
リンク・セオリー・ジャパン ☎03-6865-0206
ビショップ ☎03-5775-3266
UTS PR ☎03-6427-1030

こちらの記事もおすすめ


撮影/嶋野旭 ヘア・メーク/大和田京子 スタイリスト/谷藤知可子 取材/柏崎恵理 編集/永見 理