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女優・原 日出子さん「生きていれば汚れるのは簡単。きれいに生きるには努力が必要」

「人生の中で今がいちばん元気で体調がいい!」と語る女優の原日出子さん。太陽のような明るい笑顔で、これまでも数多くのドラマや映画などで優しい母親役を演じてきましたが、実は40代半ばで重度の更年期障害に襲われ、辛い日々を送っていたそう。そこからどう乗り越えられたのかを伺いました。

生きていれば汚れるのは簡単。きれいに生きるには努力が必要

女優として活躍する一方、37歳、25歳、24歳の3人の子どもの母でもある原 日出子さん。長女から母の日にプレゼントされた白いワンピースで。「女優としていちばんいい時期に子育てで忙しく、仕事に時間をかけられませんでしたが、子育ても終わったので、これからは仕事に邁進します」。

《Profile》
’59年東京都出身。劇団四季の研究所を経て女優デビュー。’81年、NHK連続テレビ小説「本日も晴天なり」の主演で注目され、歌手デビューも果たす。’09年に短編映画『雪の花』で夫の渡辺裕之と夫婦役で共演。’19年映画『鈴木家の嘘』で高崎映画祭最優秀主演女優賞受賞。NHK大河ドラマ「青天を衝け」に徳川慶喜の母、吉子役で出演中。

今は人生でいちばん元気。 大切なことは解毒です。 効くと言われたことは、 自分でエビデンスを検証します

放送中のNHK大河ドラマ「青天を衝け」の撮影真っただ中で、草彅剛さん演じる徳川慶喜の母、吉子を演じています。大河は、24歳のとき「徳川家康」で家康の長女役で出演以来38年ぶりです。

撮影は夫(徳川斉昭)役の竹中直人さん、草彅 剛さんとご一緒することが多く、とても楽しい現場です。草彅さんは飄々と演じられるのですが、すごく計算してお芝居をされていて、うまいなあといつも感心してしまいます。竹中さんは合間にずっと口笛吹いているの。しかも上手!夫(俳優の渡辺裕之さん)と同年代で、「最近眠れない」とおっしゃるので、「うちの旦那も同じこと言ってます」と話したりして(笑)。若い人とご一緒するのはもちろん楽しいけれど、元気な先輩とお仕事するのはうれしいですよね。私も頑張ろうと思えます。

年を取るって、みんな自由になって、いいのよね。何をしていても自分というものが揺るがない。「徳川家康」の頃は、周囲の目が気になって挑戦できないことも多かったけれど、今はどんなことも挑戦できるようになりました。若い頃より欲深くなってるのね、私。還暦を越えましたが、今、仕事がとても楽しいんです。

最低でも8時間睡眠。健康法はよく寝ること

若い頃に真っ黒に日焼けして、その代償でシミはいっぱいありますが、肌質はいい方かもしれません。スキンケアはナチュラル成分のものを使うことが多いかな。メークを落とした後は、切って使うオリーブ石鹼「サボン ドマルセイユ」をしっかり泡立てて洗顔。最初に化粧水をつけますが、毛穴が開いているときは水素水サーバーの冷水を顔にばちゃばちゃつけて、タオルでふき取らず、水分が乾くまでそのままで。そうすると肌が引き締まります。次に美容液をつけて、最後にドゥ・ラ・メールのザ・モイスチャライジングソフト クリームで閉じ込めます。透明感がなくなってくると、炭酸ジェルパックを。大したことはしませんが、そのつど対処しています。

最近、髪の毛が薄くなって悩んでいるの。大豆イソフラボンを発酵させたサプリ「エクエル」で髪の毛が生えてきた人もいると聞いて、飲み始めました。1カ月試して効果があれば続けたい。ほんと、髪は試行錯誤中です。運動は、起床後すぐに夫婦並んで、YouTubeでラジオ体操第一と第二をやっています。ラジオ体操は正しく深くやると結構いい運動になって汗も出てきます。あえて空腹のときにやって代謝を上げるようにしています。長年ジムにも通っていましたが、腰を痛め、手も関節痛で、ダンベルが持てなくなりました。そこで、自分の体重をかける自重トレーニングでセルフ筋トレをしています。

でもいちばんの健康法はよく寝ること。長年5時起きで、子ども達にお弁当や朝ご飯を食べさせて送り出していましたが、3人目の長男が大学を卒業した昨年から、目覚ましをかけなくなったら、何もない日は11時まで寝ちゃうの。夜中に何回も起きる主人に「羨ましい」と言われています。夜は12時から1時までには寝て、最低8時間。

貧血と更年期障害が重なりぼろぼろだった40代

そんな私が40代半ばで襲われた更年期のときは、何をしても寝られない辛い辛い時期がありました。44歳のとき、歩いたら息が上がり、家にいても立っていられない。常にソファに横になって、家事もできなくなるなど、急に不調を感じるようになりました。「怖い病気なんじゃないか」と思うと病院にも行けず、1年ほど放っていたのですが、夫に病院に行けと強く言われ、まずホームドクターに診てもらいました。すると、もともとあった子宮筋腫が6cm大になり、月経過多症からくる貧血が原因との診断。造血剤を処方され、様子を見ることになったのですが、症状はますます酷くなっていきました。貧血で体調が悪いところに加えて鬱症状も出始め、子どもを学校に送り出してからは寝室に閉じこもり、人と話すのも嫌で、母に話しかけられても嫌悪感を感じるように。口角を上げようと思っても上がらず、笑うこともできない。夜中には震えて目が覚め、朝まで眠れないことがたびたび。常に手足が氷のように冷たくなっていました。そんな状態が3年も続き、このまま死ぬんじゃないか、もう女優はできない……。そう思って、ようやく重い腰を上げて婦人科を受診しました。すると、女性ホルモンの数値的には問題はないけれど、更年期障害との診断。更年期向けの漢方薬「桂枝茯苓丸」を処方されました。

それから周囲の方々に相談すると、同じような経験をされたスタイリストさんから「マッサージでも受けてみれば」とアドバイスをいただいたり、女優の奈美悦子さんに「日出子ちゃんは頑張りすぎなのよ。もっと人を頼ればいい」と言われて、はっとしました。元々私は何でも引き受けてしまう性格。当時長女は反抗期、次女と長男は小学生で子育て真っ最中。子育ても家事も仕事も一手に引き受け、寝る時間も削って全部ひとりでやっていました。徹夜もしたし、寝ても3時間程度。子どもと夫が最優先で、自分のことは全部後回し。それを当たり前にやっていたから、家族もまったく気にしてなかったと思います。それまで心身ともに丈夫で病気知らず。まさか自分がそんな状態になるとは思ってもいなかった。家族の中心として元気にやっていたことが全部停止し、仲が良かった夫婦関係も険悪に。身も心もぼろぼろでした。昔から私は辛いと言えない性格で、自分の状態を夫に詳しく話していなかったのです。でも、このままでは大変なことになると、ある日夫と向き合い、鬱状態であること、自分でもどうしたらいいかわからない辛い気持ちをボロボロ泣きながら打ち明けました。自分で治すしかないこと、精神的に不安定で会話もうまくできないけど我慢してほしい、一応洗濯もして、ご飯も作っていたので、動けるときに好きなように家事をさせてほしいと伝えました。夫はわかったようなわからないような感じでしたが、話したことでほっとしました。不調を感じてから3年以上経っていました。

実は造血剤が体に合わなかったこともあり、薬に頼らず根本的に体を治す方法はないかと知人に相談。発酵食品のサプリを飲み、マッサージにも通い始めました。最初は出かけるのも億劫でしたが、人に体を触られることで癒され、次第に行くことが苦じゃなくなって、施術を受けるとしばらく元気な状態が続くんです。時間はかかりましたが、徐々に気持ちが上向いていきました。サプリもマッサージもいいかもしれないとアンテナを張っていると、いろんな情報が入ってきて、そのつどエビデンスを調べるうちに、体内の解毒がいちばん大切だというところにたどり着きました。今も続けている発酵食品サプリにレモン半個、リンゴ酢、シナモンパウダー、マヌカハニー入りエルダーべリーで作った酵素ジュースを毎朝飲み、野菜もホタテ貝の粉で洗って農薬を落とすなど、体に入れる食べ物に気を配り始めました。また不眠解消にCBDオイルを取り入れ、お風呂で温まってから寝るようにすると徐々に眠れるようになっていったんです。同時に年齢的に生理の回数が減ると貧血が和らぎ、閉経後は完治。50代はめきめき元気になっていきました。今は人生でいちばん体調がいいですね。それは、ホルモン療法に頼らず、自力で体を整えたからだと思うんです。この経験から、元気でなければ何もできないと思い知らされました。心も体も健康でいることがいちばん。絶対に死ぬまで元気でいようと思います。

家族がみんないい人間。それがいちばんの幸せ

子連れ再婚したのは34 歳のときでした。最初の結婚は23歳。若かったから自分の価値観に相手を寄せようとしてうまくいかなくなって。それでも私は別れる気はなかったけれど、相手から別れたいと言われ、捨てられたんですよ(笑)。長女と一緒に家を出たのが8月で、ものすごく落ち込んで苦しかったけれど、このまま新年を迎えたくないと決意。年末に2人で離婚届を出して、渋谷駅で「じゃあね」と言って別れました。その経験から、結婚することでマイナスになるならしないほうがいいと、再婚する気はまったくなかったんです。でもドラマで共演した夫はアプローチが直球で駆け引きがない。娘とも仲良くなり、彼の両親も私と娘を喜んで受け入れてくれ、結婚を決めました。幸せなことです。

彼は優しくて、乱暴な言葉を使わないし、とても穏やかな人。でも、私達は趣味も考え方も生き方も違います。彼は家のことは何もしないし、子どもの学校行事より仕事優先。でも私2度目でしょ?過度な期待もしないし、違って当たり前と思っているし、それが不満にはならなかったですね。でも今はおかげさまで、言いたいことも言えてわかりやすい関係になりました。それぞれが仕事もやりたいようにやって、お互いがそれを許しているのでありがたいです。夫は本当にいい人間なんです。手前味噌ないい人間。それが何より幸せですね。

90歳で亡くなった母が、「母親がうるさく言わなくていい。おいしいご飯を作って一緒に食べることが大事。喧嘩しても叱っても、ご飯を作って食べさせる。そうすれば黙っていてもちゃんと育つから」と。そこだけは自信があって、子ども達を見ていると、間違ってなかったなと思います。

韓国ドラマを観ているうちに韓国語を理解できるように

旅行が大好きで、明日体が空いたとなると、急遽ホテルを予約し、飛行機に乗るタイプ。今はそれも叶わないので、もっぱらネットフリックスを楽しんでいます。あまりに周囲に勧められて「愛の不時着」を観て驚きました。なんてお金をかけているんだろう、いいもの作っている、とにかく悔しいくらいに芝居がうまい。その研究心から、「梨泰院クラス」「ミスター・サンシャイン」などどんどん観て、先日「椿の花咲く頃」を観終わりました。料理をしながら、iPadで観るのですが、観ているうちに字幕を見なくても耳が慣れて、韓国語を理解できるの。勉強はしてないのですが、昔から耳がいいからかな。時代劇は無理ですけどね。

年を取るほど、品がいいことがとても大事だなと思います。どんどん浄化されて美しくなっていく。そんな年の重ね方をしたいですね。見た目だけじゃなく、心の中もね。それには日々の生活を大切にしなければいけないのかな。汚い物ばかり見ていると汚い心になって、命が汚れます。汚れることって簡単なのね。でも美しいものにしていくには努力が必要です。身ぎれいにしたり、家の中を片付ける、外に出て自然を愛でたり、美術を観たり、いい音楽を聴く。ひとつひとつ心を込めて丁寧に、魂が磨かれるような生き方をしたいですね。「あのおばあちゃん、いいわね」って言われるようなおばあちゃんになっていれば本望です。

原さんから40代に伝えたいメッセージ

女性の40代は、子育てに加えて親の介護も始まり、自分より家族が中心。でも、まずは自分を大事にしないと周りも幸せにはならない。自分の人生の主役は自分。自分を大切にしてください。

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2021年『美ST』8月号掲載
撮影/吉澤健太 ヘア・メーク/山口久勝(ROND.) 取材・文/安田真里 編集/和田紀子

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