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【不妊治療のリアル体験談2つ】40代、不妊治療のやめ時がわからないまま…

初産の平均年齢が30歳を超え35歳以上の出産も28.6%と20年で約3倍に。不妊の検査や治療をした、または今している夫婦は22.7%と約4.4組に1組です。保険による助成は、妻が43歳未満、つまり42歳までの“壁”も。年齢や、費用面、パートナーとの協力…読者たちが経験したことを聞きました。

不妊治療、する、した、やめる、続ける?それぞれの体験談

ケース①妊娠と流産を経験。治療のやめ時がわからず、50歳を前に「今もしできたら?」と考えてしまう自分もいます

主婦(秋田県在住 49歳・夫45歳)
4つ年下の夫と41歳で授かり婚をしたのですが結婚式直前に流産。高齢とはいえ妊娠がきっかけで子供のいる生活を見据えた結婚だったので、不妊の可能性を疑ったことがありませんでした。夫も私もきょうだいが多く他の家庭は子だくさん。出産祝いを選ぶたび次は自分たちだと思っていましたがなかなか授かりませんでした。

夫は私が欲しいなら子供がいても良いね、と夫婦二人で満足なタイプ。私は病院が苦手で高度不妊治療に抵抗を感じ、鍼灸や温泉に通うなどの方法で自分なりに妊活していました。45歳の時、念願の自然妊娠をして、うきうきの妊娠生活を送っていましたが5カ月で流産。2度目の流産に自分でも驚くほど落ち込み、しばらく鬱状態に。私の祖母が心配し費用を出してくれ、46歳からクリニックでの治療を決意。今しかない、と仕事も辞めて専念。

ところが運悪くコロナ禍に重なり治療はゆっくりのペースを余儀なくされました。ドクターの話を聞き40代後半の妊娠の可能性の低さを改めて認識。でも諦められない自分もいます。最近話題の卵子凍結への補助が若い頃にあったなら何か違ったのかな、せめて20代の頃に妊娠に対する知識があったならと悔しい気持ちも。卵子を凍結したり結婚直後に受精卵を凍結しておくことは選択肢を広げる一つの手段だと思います。

この後の人生もう後悔しないよう気が済むまでトライしようと夫と話し合い、50代からの人生も見据え資格の勉強も始めました。

ケース②5年間治療を経験。夫婦二人で生きていこうと舵を切り、地方に移住しました

サロン経営(神奈川県在住 46歳・夫46歳)
結婚は20代半ばでしたが、仕事も楽しく子供は自然に任せていました。夫の両親が相次いで病気をし、その際にふと「孫が欲しい」ともらしたのがきっかけで40歳から不妊治療を。

最初から5年・45歳までと出口と予算を決めて好きな仕事を続けながらの妊活でした。自分は楽観的なほうだと思っていたのですが女性としての能力にNGを突き付けられているような気持ちになり夫のちょっとした物言いに号泣することも。モチベーションを保つため子宝に良いと噂の神社仏閣を巡ることを言い訳に、たくさん夫婦で旅行に行きました。

45歳の誕生日を境に妊活卒業をし、夫の地元の鎌倉に転居。夢だったお料理教室もオープンして、夫婦二人の生活を楽しんでいます。

38歳以降に第一子出産を経験した読者30名に聞きました

Q1.不妊治療しましたか?

A.はい…21人、いいえ…9人
38歳以上で初産の方は今回の調査では半数以上が何らかの不妊治療にトライをした経験が。厚労省の調査では夫婦の約4.4組に1組の割合で治療を行っているとの結果。’22年から治療が保険適用になったことでぐっとスタートのハードルが下がり、少子化解消も叫ばれ、以前よりは「周囲にオープンにできるようになった」「治療を理由に仕事を休むことを職場に伝えている」など、不妊治療への理解が進んだと感じているよう。

Q2.どのくらいの期間?

A.1年未満…4人、2~3年…14人、3~4年…9人、5年以上…3人
期間はおおむね2~5年。10年以上の人もいました。「心理的なストレスも関係あるのか、やめたら授かりました」という声も。「結婚してすぐにクリニックに通って検査をするカップルも多いよう。専門クリニックの数も増えていて治療を受けやすい環境かも」「年齢によって早く高度医療のステップに移行することを勧めたり、TRIO検査など一般の保険診療との併用が認められている先進医療を取り入れるなど、医療機関でも期間の短縮への努力を感じた」という最近の傾向も。

Q3.費用はどれくらいかかったか

A.100万未満…4人、~200万…6人、~300万…14人、~400万…4人、~500万…2人
どのくらいの期間続けたか、保険を使えたかによって大きく異なりましたが、やはりかなり高額。体外受精1回にかかる費用はクリニックにより差異はありますが約50万円、顕微鏡受精は50~70万円ほど。回数や年齢制限があるものの高額療養費制度の対象になることもあり、保険が使えるようになったのはかなり費用面では有効のよう。「43歳以上への保険適用や、受けられる治療回数の増加措置を待ちたい」という声もありました。

【不妊科医が解説】今はさまざまな治療方法が。ですが一番大切なのはご夫婦の心身の健康です

’22年から人工授精などの一般不妊治療と生殖補助医療が保険適用になりました。年齢や実施回数などに制限はあります。これにより不妊治療が広く社会に知られていくと感じますし、保険診療にあたり夫婦での受診が必要な機会が増え、以前よりも男性にとっても自分事と捉えられている実感も。年齢が上がるほど不妊症の原因は複雑化する傾向にあります。卵子の減少や卵子や精子の質の低下、子宮筋腫など子宮の疾患や子宮内膜症など骨盤内炎症性疾患の罹患率が上昇することが原因です。

ですが今は経過によっては自費診療で行う治療方法や検査、保険診療と自費診療を組み合わせて行うことができる先進医療など、多くの方法があります。さらに子宮内の細菌叢が注目されており着床に影響するのではないかという考えから子宮内細菌叢検査などの先端医療の治療も注目されています。治療の必要性をしっかり判断し最適な治療が選択していけると良いですね。パートナーと気持ちを共有しながら前向きに治療を進めてほしいと思います。一番大事なのは自分らしく人生を歩めることではないでしょうか。

さまざまな患者さんを見ている病院のスタッフにも、遠慮なく気持ちを吐き出してもらうとまた良い方向に進めることもあるかと思います。授かることの先にある、子供を産み、育てていくための治療ですのでご夫婦自身の体と心の健康を最優先にすべきですね。(真壁先生)

教えていただいたのは…

⼩畑会浜⽥病院 不妊科 医師/真壁友子先生

⽇本⽣殖医学会⽣殖医療専⾨医。診察を通じ⽇々第一線で不妊治療に携わる。気持ちに寄り添い対話を大切にしながらの治療に定評。

2024年『美ST』8月号掲載
取材/佐藤理保子 写真/PIXTA グラフデザイン/スズキのデザイン 再構成/Bravoworks,Inc.

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