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【不妊治療のリアル】42歳主婦「次は男の子をお願いね」の言葉に追い詰められ…

初産の平均年齢が30歳を超え35歳以上の出産も28.6%と20年で約3倍に。不妊の検査や治療をした、または今している夫婦は22.7%と約4.4組に1組です。保険による助成は、妻が43歳未満、つまり42歳までの“壁”も。年齢や、費用面、パートナーとの協力…読者たちが経験したことを聞きました。

不妊治療、する、した、やめる、続ける?それぞれの体験談

ケース①いわゆる「2人目不妊」で海外での治療を経て最近帰国。国内のクリニックで着床し、超早期の今を大切に過ごしています

主婦(東京都在住 42歳・夫45歳・娘4歳)
37歳で第一子を妊娠、38歳で出産。その後年齢のこともあり即2人目を望むもなかなか授からず不妊治療に踏み切りました。「一人っ子でいいの?」「仕事もいいけど2人目は早いほうがいいわよー」子供が一人いると友人や身内から気軽にこんな声をかけられることが多く、心の底から傷つきました。

特に高齢の私の祖母は2人目不妊が理解できないらしく「次は男の子をお願いね」「きょうだいは年齢が離れないほうがいいわよ」などプレッシャーを感じる言葉をかけられることも多く…初めての子育てとも相まって追い詰められてしまいました。

当時はフルタイムで働いていましたが子育ての大変さよりも、不妊治療との両立のほうが負担感がありました。さらに採卵のための点鼻と注射のあと具合が悪くなることが多く、仕事も休みがちに。そして不妊治療2年目に夫が海外転勤に。いつか海外赴任になることはわかっていたのですが、事前の考えでは夫は単身で、私は東京でワンオペで子育てして働きながら実家で夫の帰国を待つ予定でした。

でも心身ともに疲れ果てている状態で祖母のいる実家に戻ることに抵抗を感じ、仕事を辞めて赴任先のアメリカについていく決断をしたんです。帯同先では夫と子供と心穏やかに過ごすことができ、運動も始めて体質を整える穏やかな治療も継続。昨年帰国し治療を再開したところ、以前に採卵凍結した受精卵がなんと着床。以前苦労して採卵しておいて良かった…と、今は体を大切に妊娠生活を送っています。

ケース②再婚カップルで、今まさに治療中。卵子の採取に苦労して、病院も4つ目です

会社経営(東京都在住 44歳・夫44歳)
20代前半で結婚して5年で離婚。自分一人で生きていく覚悟を決めて起業もしたのですが40歳の時に、穏やかで尊敬できる今の夫と巡り合って結婚。この人と子育てをしてみたいと妊活をスタートしました。

年齢的に保険は使わずに最初から自費治療を選択。夫は全面的に協力してくれ心強いですが、採卵誘発剤を使って採卵しても卵胞の発育がうまくいかず、辛い思いもあります。ドクターとの相性もあり、今病院は4カ所目です。治療費も、まあまあの外車が買えるほどかかっています。

最近体への負担が少ない自然周期採卵という方法に切り替え、成熟卵の採卵・凍結に成功したところ。先の見えない治療ですが、あきらめず夫婦二人三脚でもう少し頑張ってみようかと話しているところです。

38歳以降に第一子出産を経験した読者30名に聞きました

Q1.不妊治療しましたか?

A.はい…21人、いいえ…9人
38歳以上で初産の方は今回の調査では半数以上が何らかの不妊治療にトライをした経験が。厚労省の調査では夫婦の約4.4組に1組の割合で治療を行っているとの結果。’22年から治療が保険適用になったことでぐっとスタートのハードルが下がり、少子化解消も叫ばれ、以前よりは「周囲にオープンにできるようになった」「治療を理由に仕事を休むことを職場に伝えている」など、不妊治療への理解が進んだと感じているよう。

Q2.どのくらいの期間?

A.1年未満…4人、2~3年…14人、3~4年…9人、5年以上…3人
期間はおおむね2~5年。10年以上の人もいました。「心理的なストレスも関係あるのか、やめたら授かりました」という声も。「結婚してすぐにクリニックに通って検査をするカップルも多いよう。専門クリニックの数も増えていて治療を受けやすい環境かも」「年齢によって早く高度医療のステップに移行することを勧めたり、TRIO検査など一般の保険診療との併用が認められている先進医療を取り入れるなど、医療機関でも期間の短縮への努力を感じた」という最近の傾向も。

Q3.費用はどれくらいかかったか

A.100万未満…4人、~200万…6人、~300万…14人、~400万…4人、~500万…2人
どのくらいの期間続けたか、保険を使えたかによって大きく異なりましたが、やはりかなり高額。体外受精1回にかかる費用はクリニックにより差異はありますが約50万円、顕微鏡受精は50~70万円ほど。回数や年齢制限があるものの高額療養費制度の対象になることもあり、保険が使えるようになったのはかなり費用面では有効のよう。「43歳以上への保険適用や、受けられる治療回数の増加措置を待ちたい」という声もありました。

【不妊科医が解説】今はさまざまな治療方法が。ですが一番大切なのはご夫婦の心身の健康です

’22年から人工授精などの一般不妊治療と生殖補助医療が保険適用になりました。年齢や実施回数などに制限はあります。これにより不妊治療が広く社会に知られていくと感じますし、保険診療にあたり夫婦での受診が必要な機会が増え、以前よりも男性にとっても自分事と捉えられている実感も。年齢が上がるほど不妊症の原因は複雑化する傾向にあります。卵子の減少や卵子や精子の質の低下、子宮筋腫など子宮の疾患や子宮内膜症など骨盤内炎症性疾患の罹患率が上昇することが原因です。

ですが今は経過によっては自費診療で行う治療方法や検査、保険診療と自費診療を組み合わせて行うことができる先進医療など、多くの方法があります。さらに子宮内の細菌叢が注目されており着床に影響するのではないかという考えから子宮内細菌叢検査などの先端医療の治療も注目されています。治療の必要性をしっかり判断し最適な治療が選択していけると良いですね。パートナーと気持ちを共有しながら前向きに治療を進めてほしいと思います。一番大事なのは自分らしく人生を歩めることではないでしょうか。

さまざまな患者さんを見ている病院のスタッフにも、遠慮なく気持ちを吐き出してもらうとまた良い方向に進めることもあるかと思います。授かることの先にある、子供を産み、育てていくための治療ですのでご夫婦自身の体と心の健康を最優先にすべきですね。(真壁先生)

教えていただいたのは…

⼩畑会浜⽥病院 不妊科 医師/真壁友子先生

⽇本⽣殖医学会⽣殖医療専⾨医。診察を通じ⽇々第一線で不妊治療に携わる。気持ちに寄り添い対話を大切にしながらの治療に定評。

2024年『美ST』8月号掲載
取材/佐藤理保子 写真/PIXTA グラフデザイン/スズキのデザイン 再構成/Bravoworks,Inc.

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