HEALTH
最近PMS(月経前症候群)が悪化して生理前のメンタル不調がひどい……と悩んでいる人はいませんか? その不調は、もしかしたらPMDD(月経前不快気分障害)かもしれません。今回は、PMDDとPMSの違いと、PMDDの対処法について解説します。
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PMDDとは、PMSの中でもメンタルの症状が特に強く出て日常生活にまで支障が出るような場合のことをいいます。
PMSの症状のひとつとして憂うつ感やイラつきが挙げられますが、PMDDの場合はさらに強い気分の落ち込みや不安・緊張感、情緒の不安定、抑えられないイライラなどがあります。
また、PMDDはメンタルの不調に伴い、「不眠や過眠などの睡眠障害が起こる」「攻撃的・暴力的になる」「希死念慮やパニック発作に繋がる」など、PMSに比べて社会生活や人間関係にも大きな影響が出やすいのも特徴です。
PMDDを発見するポイントは、メンタルの不調が生理周期に合わせて現れるかどうかです。同じような症状でも、生理周期に関係なく起こる場合は、PMDDには当てはまりません。
PMDDの症状の一例は、「突然悲しくなったり涙が出たりする」「イライラして対人関係に支障が出てしまう」「特に理由がなく不安や緊張が続く」「絶望したり自己批判的な考え方になったりして落ち込む」などです。
上記のような症状が生理の1〜2週間前から起き、生理開始〜終了の間で軽快し気にならなくなる場合、PMDDの疑いがあります。
PMDDを予防・緩和する方法を7つご紹介します。
毎日の基礎体温や心身の状態を生理アプリや手帳に記録し、PMDDが起きる時期や症状の重さを把握しましょう。PMDDが起きる時期がわかれば、心の準備ができたり予定を調整したりなど自分の負担を減らしやすくなります。
生活リズムの乱れは、自律神経のバランスを崩し、メンタルの不調を悪化させます。できる限り起床や就寝、食事、入浴の時間を毎日同じにして、自律神経を整えましょう。
PMDDの時は脳が興奮状態になっているため、脳を活性化させるカフェインは症状を悪化させる可能性があるといわれています。生理前はカフェインを控え、白湯やノンカフェインティーなどを選びましょう。
心身の健康を保つには、栄養素が不足しないようにバランス良く摂るのが大切です。特に、カルシウムやマグネシウム、ビタミンB6の不足は、イライラに繋がりやすくなります。カルシウムが豊富な乳製品や小魚、マグネシウムの含有量が多い魚介類や大豆製品、ビタミンB6が多く含まれるレバーや豚肉を意識して摂りましょう。
運動はメンタルの不調を悪化させるストレスを軽減し、不眠の改善にも役立ちます。ウォーキングや軽い筋トレなどで定期的に体を動かしましょう。PMDDの時には、リラックス効果の高いストレッチやヨガもおすすめです。
家族やパートナー、親しい友人など大切な人には、PMDDの時はいつも通りに生活できないことを伝えておきましょう。PMDDが原因だと分かると周りの人の負担が減り、理解されている安心感は症状の緩和にも役立ちます。
気持ちを落ち着ける方法を身につけておくと、PMDDを緩和できる可能性があります。一例として、症状を感じたら呼吸に集中してみましょう。楽な姿勢でゆっくり腹式呼吸をすると、心身がリラックスし精神が安定しやすくなります。
ここからは、PMDDに良く用いられる薬での治療法をご紹介します。生活習慣を見直しても症状の改善が見られない場合は、薬での治療も検討しましょう。
低用量ピルは、婦人科でよく使われる治療法です。ホルモンバランスを整えて、PMDDを含むさまざまな生理の不調を改善します。実際に低用量ピルを飲むことがPMDDの症状の改善に役立ったとの報告もあります。ただし、低用量ピルはメンタルの不調そのものを改善する薬ではありません。症状が重い人には、あまり効果が見られないことがあります。
PMDDの症状の中で不安や緊張が強い場合には抗不安薬が使われます。PMDDでよく使われる抗不安薬は、興奮を鎮めたりリラックスさせたりするGABAの働きを高め、気持ちを落ち着ける薬です。GABAは睡眠の質を改善する効果も期待できるため、PMDDの睡眠障害にも役立つ可能性があります。
PMDDには、抗うつ薬の一種であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の使用も推奨されています。SSRIは、精神を安定させる働きがあるセロトニンを増やす薬です。症状や重症度に合わせて連続投与したり生理前の2週間のみ投与したりなど、使用方法が異なります。
閉経が近い40〜50代の女性の場合、GnRHアゴニストというホルモン療法も選択肢のひとつです。GnRHアゴニストは、卵巣機能を抑制して生理を止め、女性ホルモンの変動によるPMDDの症状を改善します。メンタル以外の生理の不調に対する効果も期待できますが、閉経と似たような状態になり、更年期障害や骨粗鬆症のリスクが高まるというデメリットもあります。
PMDDには漢方薬もおすすめです。漢方薬は自然由来の生薬が体に優しく働きかけるため、西洋薬よりも副作用が少ないといわれています。PMDDには、ホルモンバランスや自律神経の乱れを整える、鎮静作用で心を穏やかにするといった漢方薬が適しています。
・加味逍遙散(かみしょうようさん)
女性ホルモンの変動によって起こりやすい精神の症状に働きかけます。疲れやすく肩が凝る人のイライラや気分の落ち込みに用いられます。
・桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
精神を安定させることで自律神経を整えます。疲れやすく興奮しやすい人の不安や不眠、イライラに効果的です。
PMDDに有効な漢方薬にはこの他にもさまざまな種類がありますが、効果を得るには自分の症状や体質に合ったものを見極めなければなりません。定期的な通院の時間がとれない人や対面だと話しにくいという人は、オンラインの漢方相談を活用してみてはいかがでしょうか。最近はスマホひとつで利用できる個別相談サービスもあります。
教えてくれたのは…あんしん漢方 ライター 円山 真由佳さん
編集/根橋明日美
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