HEALTH
「気分が落ち込む」「イライラしやすい」などの更年期のメンタル不調を「年齢によるものだから仕方ない」と我慢したり気合いで乗り越えようとしていませんか? 医療の力を借りる大切さや、セルフケアの方法を専門家に聞きました。
昨今は、メンタルウェルビーイング(心の安定や幸福度)を高めることも、美容の一部として捉えられるようになってきました。それにもかかわらず、更年期にさしかかると、感情のコントロールが難しくなり「なんだかうまくいかない」「以前の自分と違う」などと感じる人は少なくありません。
実際、更年期の症状に悩む女性のおよそ7割がメンタルの不調を感じているというデータもあり、多くの人が 「更年期の心の揺らぎ」 に戸惑っているようです。
そこで、婦人科と心療内科を専門とする横倉恒雄先生(横倉クリニック院長)に、更年期をポジティブに迎えるヒントや乗り越え方、実際に症状が気になるときの治療法などを伺いました。
――日々多くの患者さんを診察されるなかで、更年期にメンタルの不調を訴えてこられる方は実際に多い印象ですか?
「はい、とても多いですね。この世代は、社会的なストレスがいくつも重なりやすい世代です。子どもの受験や反抗期、親の介護、会社での責任やプレッシャー……。とくに女性は、家庭と仕事の両方で大きな役割を担っている方がほとんどのように感じます。
さらに、この時期は “ミッドライフクライシス” とよばれる心理状態に陥りやすい年代。“大人が迎える第二の思春期” とも呼ばれ、40、50代の約8割が直面するといわれています。
人生の折り返し地点に差し掛かり、これまでの人生やキャリアを振り返って『これで良かったのか?』『これからどう生きていこうか』など、疑問や不安を抱えやすい状態になりがちです」
――なるほど。更年期はホルモンバランスの乱れが原因とよく聞きますが、実際それだけではないということでしょうか?
「そのとおりです。更年期に入ったからといって、全員がつらい症状を感じるわけではありません。もともとの性格・環境ストレスなどによって症状の出かたは大きく変わります」
「性格面では、几帳面で完璧主義、甘え下手な性格などの場合、症状が出やすくなる傾向にあります。ストレスを認めず『自分は大丈夫』と思っている人ほど、実は無自覚にため込んでいるということも多いです。
つまり、更年期だから不調になるのではなく『更年期とストレスが重なると不調になる』ということ。更年期の症状は、女性ホルモンの影響だけでなく、複数の要因が合わさることで出てくるということを、まず知っていただくとよいと思います」
――40~50代は外見の変化も感じやすい時期。肌のたるみやシミ、シワといった年齢にともなう変化もメンタルに影響しそうですが?
「そうですね。患者さんのなかには、40代に入ったばかりでも『最近老けてきた』『衰えが気になる』といった言葉をよく口にされる方もいます。でも、外見を気にしすぎると余計なストレスがかかってしまう可能性もあります。
それに加えて、現代の働き方の影響も大きいです。座りっぱなしでパソコンばかり見ていて、会話も少なくなりがち。そうすると、表情筋を使わなくなり、血流も悪くなります。
結果として、外見の悩みも増え、心も体調もどんどん落ち込みやすくなるんです」
――メンタルがかなりつらくても『更年期だから仕方ない』とガマンしてしまう人もいますよね。今の心理状態がどのくらい危険なのか、自分では判断しにくいものです。病院に行ったほうがいいサインなどがあれば教えてください。
「心の不調が強く出ている場合、早めに専門医に相談していただくのがベストです。
たとえば、気分の切り替えができない、休日は1日中パジャマのまま、お風呂に入れない、外出ができない、人と会うのが億劫など行動面に支障が出ている場合は治療が必要なレベルです。放っておくと、うつ病などの病気に発展するリスクもあるので、そうなる前に一度、専門医に相談してください。
私のクリニックでは、ホルモン検査や脳疲弊度テストを用いて、更年期の影響と心の両方からの状態を診るようにしています」
――そのうえで、どのような治療を提案されるのでしょうか?
「私がまずおすすめしているのは、プラセンタ注射です。これは厚生労働省も更年期障害の治療として認可している医療用の注射で、年齢や病院によっては、保険がきくケースもあります。
自律神経のバランスを整える働きがあるので、うつっぽさや頭痛などの心の症状が改善されたり、疲れにくくなったりする効果が期待できます。それだけでなく、肌の調子がよくなったり、寝起きがよくなったり、うれしい変化があらわれて、気持ちが前向きになる方が本当に多いんです」
――美容面にも効果が期待できるとなると、試してみたくなりますね。
「プラセンタ注射を5~6回受けたタイミングで、『化粧のノリが違う』『乾燥が気にならなくなった』などという声がよく聞かれます。見た目の変化は心にもいい影響を与えるので、生活全体に好循環が生まれてくるんです。実際に、多くの女性が継続されています」
――ホルモン補充療法や精神安定剤など、他の治療との違いはありますか?
「ホットフラッシュのような血管連動系の症状には、ホルモン補充療法(HRT)も有効ですが、血栓症などのリスク管理が必要ですし、心の不調には強くありません。
また、心療内科や精神科で処方される薬は症状を抑えるだけの“対症療法”になりがちで、服薬が習慣化するリスクもあります。症状によって必要と判断される場合は、私のクリニックでも処方することはありますが『あくまでも薬は一時的な杖だよ』と伝え、減らしていけるようにしています。
その点、プラセンタは副作用もほとんどなく安全性も高いので、更年期の精神的ストレスに対するアプローチとしておすすめです」
――医療用のプラセンタ注射は、サプリメントや化粧品に含まれているものとは違うものですか?
「サプリメントや化粧品に配合されているプラセンタは、馬や豚の胎盤から抽出された成分を使ったものがほとんどです。一方、医療機関で使用されているプラセンタ注射は、人の胎盤から有効成分を丁寧に抽出したものです」
――日常生活がある程度保てているなら、セルフケアで回復することも可能でしょうか?
「そうですね。たとえば、メイクやオシャレを楽しんでいたり適度に外出ができているような方は、大きな心配はないと思いますので、セルフケアから取り組んでいただくのもいいでしょう。日常のなかで意識的にセルフケアを取り入れる習慣がついていくと、だんだん心と脳が整っていきます」
――具体的に、先生がすすめる “心を整えるための習慣” を教えてください。
「私は、五感を意識するケアをおすすめしています。五感は脳と連動しているので、五感に適度な刺激を与えてあげることがストレスコントロールにたいへん役立ちます。
『なんだ、そんな普通のこと?』と思う方もいるかもしれませんが、うつ傾向などメンタル不調が重くなってくると、五感で心地よさを感じる “脳の余裕” がなくなってきてしまうんです」
「いちばん簡単にできるのは、『五感を使って歩くこと』ですね。歩くという行為自体にも健康効果はありますが、そこに『感じること』を加えると、心にいい影響があります。
風の匂い、鳥の声、空の色、足裏の感触。そんな感覚を意識しながら歩くだけで、脳がリラックスしていきますよ。
現代人は、少し暇ができるとついスマホを見がちです。でも、信号待ちでちょっと空を見上げてみる、電車の中では外の景色に目を向けてみる。たったそれだけでも、気分がすっと整うことがあります。
もうひとつは、食事を “五感で味わいながら楽しむ” こと。つい、時間に追われて急いで食べたり、スマホやテレビを見ながら食事をしてしまうことがありますよね。
でも、食事は五感をフルに使える、とても大切な行為です。見た目や香り、温度、食感、噛んだときの音や味わい。そうしたことに意識を向けて、なるべくゆっくりと食べるようにしましょう。脳が満足して、更年期太りの予防や、食べ過ぎの防止にもなります」
「そして最後に、『茶飲み友達』をもつこと! なんでもないことを気軽に話せる相手がいるだけで、人はすごく救われます。
孤独や閉塞感が続くと、どうしても心は沈みがちに。気の置けない友人と、ちょっと雑談するだけでも、誰かとつながっている感覚が生まれてストレスも軽減されますよ」
――最後に、更年期を迎える女性にメッセージをお願いします。
「女性の更年期は、美しく年を重ねるか、そうでないかの分岐点。ここで『もういいや』とあきらめて手を放してしまうのではなく、意識の持ちようによって、その後の人生の生き方を磨く絶好のチャンスになります。
仕事や子育て、介護などたくさんの役割を担って奮闘し続けている女性こそ、更年期になったら自分にもっと優しくしてほしいです。自分の体や心の声をちゃんと聞いて、ちょっとした時間や隙間に“五感が喜ぶ”ことを取り入れ、自分を解放してあげること。
私は自分自身の生き方として『色気と粋』を大切にしています。色気は、人の心を惹きつける魅力。粋は、自分の生き方の美学です。色気や、粋な生き方を磨くことも、脳の健幸(けんこう)につながっていきます。
更年期は決してマイナスな時期ではありません。不調があればガマンせず専門家の力を借りるなどして、自分を大切にしてください。そして、心を整える習慣を身につけて、更年期を『幸年期』と感じられることを目指していきましょう」
教えてくれたのは…婦人科・心療内科 横倉恒雄医師
取材・文/夏野 新 写真/Adobe Stockほか
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