PEOPLE
ある日突然やってくる親の介護問題。7割の方が何らかのストレスを抱えながら、“わが家にとって最良の方法”を探りつつ進めているようです。ケアマネジャーや介護福祉士、准看護師の資格を持つ女優の北原佐和子さんに介護との向き合い方についてお話を伺いました。
女優と介護士という二足の草鞋を履いて17年。日々利用者さんとのやり取りでキラキラした表情に触れたときが、この仕事をしていてよかったと思う瞬間です。
最初は一軒家を改造した小さな宅老所のヘルパーから始めました。勤務初日、大きな声を発して車いすのテーブルを叩く認知症の方を見て、強い思いで始めたはずなのに足がすくみ、途方にくれて迷うこと数カ月。このままだといる意味がない、せめて掃除ならできるかなと、手すりの消毒や掃除機掛けを徹底的にやるうち、次第に一緒に洗濯物を干したり、利用者さんと徐々に交流が深まっていきました。
ある日、トマトを毎回残す方に、「嫌いですか?」と伺うと、「入れ歯をしてないから皮が嚙み切れなくて」という返答が。以降、皮を剝いて出せば食べてくれるように。それをきっかけに車いすの方が大声を発せられていたことにも意味があると知り、ひとつひとつの体験から介護の魅力を感じました。
その後ケアマネージャーの資格を取得し、そうすると医療を知る必要性を感じ、大変でしたが准看護師資格を取得し、仕事も視野も広がりました。以前は気持ちが追い詰められた時もありましたが、ボランティア活動も含め、長年やってきた中で、横のつながりを持てたことで悩みを吐き出せ、今は本当に充実した仕事ができています。
溜め込んでばかりいるといい状態を保てないもの。同様に、自宅介護をしている方はすべてを抱え込まず「私は無理です」と言える関係性や話せる場をぜひ作ってほしいと思います。ケアマネジャーさんやプロの協力を得て、介護をする側を支える環境を作っていくのです。
自分だけの力で介護しようなんて思わなくていい。高齢者が多い日本の介護は進んでいます。一人で抱え込まずに、介護保険もしっかり活用を。だって今の高齢者は、戦後の日本の復興を支え、多額の税金を払ってきた方ばかりですから。
そして地域包括支援センターと言っても具体的にどうすればいいかわからないですよね。両親が元気でも80歳になったら市区町村の窓口に相談し、アンテナを張り、知識と意識を持っておけばいざと言うときに慌てなくていいと思います。施設入所に抵抗があるなら、まずはショートステイなども活用していいと思います。介護はする人もされる人も、お互いに無理のない中で行うことで、より家族を大切に過ごせると思います。
介護側、利用者側の両方にとって顔の見える関係性を構築している施設はおすすめです。今はコロナ禍で理想どおりにはいきませんが、人・場所・食事などすべてをオープンにしている施設がベスト。お互いの顔がわかれば話しかけやすいし、さらに会報などでスタッフの人柄がわかると安心です。
介護される方は80歳以上が74%を占めます。80歳を超えたら、TVや雑誌の特集で勉強したり、日本の介護の仕組みを知っておくなど情報を得ておけば慌てなくてすみます。
介護離職者数、離職率ともに少しずつ減って、介護者にとっても介護の環境が良くなっていくことが目標。世界を見ても高齢者が多い日本の介護は良くなってきているとも。
50代になるとぐっと増える介護率。高齢化社会の日本では70代まで介護が続くことも。子育ても終わり、時間に余裕が生まれる時期だからこそ手を借りて自分の時間も大切に。
「’20年に准看護師資格を取得し、現在は認知症専門クリニックで働いています。そのため今も脳の仕組みや認知症について勉強する日々。女優業より、すっかり介護の仕事にはまっています」
業務提携で体験を織り交ぜながら時代劇中心のクイズ大会や音楽体操などで交流を深めています。女優北原佐和子を生かせる時間ですね。
美容やファッションでキレイでいることはお互いの力になりますね。目を引くトートバッグを持っていたり、華美にならないピアスをつけたり外見にも気を配ります。ダイヤピアス¥193,000(A collection)
2022年『美ST』12月号掲載
撮影/吉澤健太 ヘア・メーク/千吉良恵子(cheek one) スタイリスト/宋 明美 取材/安田真里 編集/小澤博子
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2024年12月16日(月)23:59まで
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