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【産後に便が漏れる…】アラフィフでの発症例もある「便失禁」対処法

産後の尿漏れは度々話題になりますが、実は便漏れに悩んでいる人も少なくありません。恥ずかしさから相談しづらくなりがちな「産後の便失禁」を改善する方法や、老後に向けての予防法、また高齢者の便漏れ対策などを専門家に伺いました。

【便失禁の実例】38歳で第1子を出産して症状が出るようになった…

7年前、38歳のゆりさん(仮名)は、硬膜外無痛分娩で第1子を出産しました。母子ともに無事ではありましたが、尿道カテーテルを外した頃から異変に気が付きます。股間全体の感覚がにぶく尿閉(尿意があるにもかかわらず排尿できない状態)を発症しており、自己導尿をすることに。さらに便秘が続き、尿閉が改善した産後1ヵ月の頃には、逆に便意がコントロール不能で漏れてしまうようになりました。産後2ヵ月ほどたった頃に、直腸肛門外科を受診。肛門の筋肉の動きを確認しながら筋肉を鍛える治療法などを試し、骨盤底筋エクササイズも習慣化。およそ3ヵ月で症状が改善しました。ゆりさんのようなケースは、決して少なくないそうです。

上記のゆりさんが実際に受診した亀田総合病院消化器外科部長、亀田京橋クリニック直腸肛門外来の高橋知子先生に産後の便失禁や予防法、高齢者向けの有効な対策などを伺いました。

Q.産後に便失禁が起きる原因はどのようなものが考えられますか?

まず考えなければならないことは、「第3、4度分娩時会陰裂傷」です。分娩時会陰裂傷とは分娩時に膣の出口が切れることで、傷の深さによって1~4度に分かれており、3、4度は肛門をしめる働きをする肛門括約筋にまで傷が及ぶことになります。次に考えることは一時的な肛門周囲の神経麻痺です。赤ちゃんが産道を通過している時間が長かったりすることで、肛門に指令を送る神経が長時間にわたり引っ張られる状態となり、便意を感じにくくなったり、肛門を収縮しにくくなることがあります。

Q.肛門括約筋に損傷があった場合、病院ではどんな治療ができますか?

エコー検査中のイメージ。提供:亀田京橋クリニック

まず、肛門括約筋が切れていないか、切れたとしても分娩時に適切に修復されているかを特殊な超音波でチェックします。万が一切れた筋肉の縫合が全くされておらず、筋肉の欠損範囲が大きい場合は手術で縫合する場合もあります。分娩から年単位で経過すると手術が難しくなることもあるので、出産後1ヵ月経過しても便失禁が改善しない場合は専門病院を受診した方が良いでしょう。

Q.肛門括約筋に損傷がない場合の治療法は?

超音波で肛門括約筋に損傷がないことが確認された場合は、収縮力や便意を感じる感覚が回復できるようにしていきます。肛門を含めた骨盤底筋への負担を減らすことが必要です。具体的には出産から約3ヵ月までは全身の筋力が低下しているため、長時間の家事で起きているだけでも骨盤底への負担がかかるので、できるだけゴロゴロ寝て過ごしていただきたいです。また、授乳時や抱っこの姿勢を良くすることも、腹圧上昇を抑える効果があり、骨盤底への負荷を減らすのでケアになります。硬い便を強く息んで排便することもNGですので、便の硬さを一定に保つ働きのある白米の摂取、便を軟らかくさせる効果のある水溶性食物繊維(葉物野菜、海藻、フルーツ)などの摂取をお勧めします。食事でなかなか上手くいかないときは刺激の少ない便を軟らかくするお薬を処方します。また、骨盤底筋体操は、尿を我慢する要領で膣や肛門をギュッとしめるだけでなく、良姿勢での腹式呼吸を加えることで、骨盤底筋全体の回復、強化が期待できます。肛門をしめる感覚が掴みにくい方へは、バイオフィードバック療法という治療法もあります。これは、筋肉収縮時の電気信号をモニター画面に表示して、それを見ながら収縮の練習を行う方法です。

Q.産後は無症状でも、ダメージが原因で老後に便失禁が起こる可能性もありますか?

女性は50歳前後より女性ホルモンの低下が見られ、それに伴って筋力の低下、便失禁を訴える方が増加してきます。50代で来院される便失禁患者様の中には、肛門超音波で筋肉に損傷が見られるケースがあり、そこで初めて出産時に傷がついたことを知る方もいらっしゃいます。

Q.老後の便失禁を予防するためにできることはありますか?

便失禁だけでなく尿失禁や骨盤臓器脱など骨盤のトラブルを予防するために、日常生活で骨盤に負荷をかけないようにすることが大切。僅かな便意や尿意で無理矢理に排便や排尿をしない、お子さんの抱っこや家事、お仕事中の姿勢をよくする、ガードルをつけない、体幹がしっかりできるようになるまではジャンプなど腹圧のかかりそうな運動は頑張らないことなどが必要です。

Q.高齢者の便失禁を改善するためにできることはありますか?

まずは、便の固形化です。軟便が漏れる方が多く、食事内容に偏りが見られます。便を軟化させる食品(乳製品、小麦製品、果物、甘いもの、アルコール)を減らす、便をまとめる作用のある白米を1回につきお茶碗1膳、1日2回摂るようにしていただきます。また、腹圧をかけないように、姿勢を常に真っ直ぐに、しゃがんでの掃除や草むしりは低い台に座って、1回20分までなどの心掛けで変わってきます。上手くいかない場合は、薬、肛門用タンポン、仙骨神経刺激療法など色々な治療法が出てきました。その方の便失禁の程度やライフスタイルに応じて最適な治療法を選べるように専門医に相談することをお勧めします。

骨盤ケアは、産後に症状が出てからと思いがちですが、本当におすすめするのは妊娠前や妊娠中から正しい姿勢や骨盤エクササイズを身につけておくことです。また、産後も症状がなくても骨盤ケアを身につけていただくことで将来への予防につながっていきます。症状が重い方へは今後は再生医療などもできる可能性があるので諦めずに、専門病院を受診してください。

専門は肛門疾患で、便秘・便失禁など排便障害と産後の骨盤トラブル。亀田京橋クリニックにおいて「産後骨盤トラブル外来」、「女性のためのこう門・おつうじ外来」を開設。個人で正しい骨盤エクササイズが学べるオンラインレッスンCoral Body Works(Instagram:@coral_body_works0305)も立ち上げている。
亀田京橋クリニック産後骨盤トラブル外来

http://www.kameda-kyobashi.com/ja/

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取材/星野星子 編集/安岡祐太朗

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