PEOPLE
頼れる上司役から冷徹な悪役、コメディまで幅広くこなすオールラウンダーな俳優・石黒賢さん。美ST読者にとってはともに青春を過ごした憧れの先輩のような存在で、爽やかさと引き締まったスタイルは変わらず、最近は渋さも加わってますます魅力を放ち続けています。40年近くも第一線で活躍し続ける石黒さんの、演じることへの思い、心構えについてお話を伺いました。
どんな仕事でもそうだと思いますが、体が資本。まずは健康でいなければ、どんな役作りもできないですよね。以前、映画『海猿』で海上保安官役を演じたときはウエットスーツの生地が張ってパンパンになるくらいに(笑)、体を鍛えて臨みました。とても細かいところだから自己満足に過ぎないかもしれないけど、「細部に神は宿る」という言葉が好きで。芝居は細かいウソをいっぱい重ねて大きなものに見せていくという作業。そうした細部の積み重ねこそが大事だと思っています。
普段はごくごく普通の生活を送っています。昔から大好きなテニスも時間があるときは週に1、2回は練習したり、いまだに試合に出ることもあります。
もちろん、健康の基礎である食べ物にも気を使っています。撮影期間は不規則な生活でロケ弁続きになってしまうので、野菜、玄米は積極的に食べるようにしています。コロナ禍になってから始めたスムージー作りは、家族の中で僕の担当。スムージーを飲み始めてから調子がよくなったかどうかはわかりませんが…悪くなっていないからいいってことでしょうか(笑)。
スキンケアも昔は本当に無頓着で何もしていませんでしたが、今はテニスのときは必ず日焼け止めを塗るように気を付けています。あとは、この年になってから急に肌の乾燥が気になるようになり、オーガニックのローションを使い始めました。
妻から化粧品をオススメされるかですか?日頃はあまりないのですが、先日珍しく「これ、いいから使ってみて!」と言われて試して気に入ったのが、美容家電の「レプロナイザー」。毛にボリュームが出るし、パサパサしないのがいいんです。あとは、ヘッドスパで頭皮ケアもしています。
子供が生まれたときに、諸先輩方から読み聞かせがいいと聞いたので妻に話したら、「これは賢の仕事」と絵本をたくさん渡されたんです。僕はもともと本が好きで活字の力もよくわかっていましたが、子供に「本を読みなさい」という親にはなりたくないなとずっと思っていて。押し付けではなく自然に本好きになってもらいたかったのですが、それには幼い頃の読み聞かせが大事なのかも、と思って始めてみたんです。
毎日同じでもつまらないので、俳優の力の見せ所!と、感情を込めたり声に抑揚をつけたりして、いろいろ工夫しながら読み聞かせをしていました。でもある日、ふと思いついてシンプルに平坦に読んでいたら、次のページをめくるとき子供が「次はどうなるんだろう!」と、グッと体を乗り出して前のめりになったことがあったんですよ。その瞬間、「観客が背もたれに背をつけて見ているうちはまだまだ。身を乗り出して見入ってしまうような演技を目指しなさい」という先輩の言葉を思い出しました。
余計なものを削ぎ落としたミニマムな表現が、いかに人のイマジネーションを掻き立てるか。それを、まさか子育て中に実感することになるとは。子供のために始めた読み聞かせが、いつのまにか自分の役者としての学びとなり、仕事の幅を広げてくれた気がします。
その話を各所でしていたら、ご縁があって絵本の翻訳の仕事が舞い込んできました。フランクフルトのブックフェアやイタリア・ボローニャの児童書専門のブックフェアも訪れて、直接作家と話すという貴重な経験も得ることができました。今までに翻訳した絵本は6冊になりますが、今後もやり続けたい仕事のひとつです。
作品作りに関して、あらためてここ数年は女性の言うことを聞かなきゃダメだなと感じています。女性のほうが断然厳しい!作品ができあがる過程がどうだったかは関係なくて、ただ純粋に面白いか面白くないか。そういう大事なことを、女性の意見を聞くたびに思い出します。
女性は体型の変化にも目ざといので、妻やマネージャー、スタッフさんなど、近しい女性の意見を参考にしています。皆さん大人だから言葉は選びつつも、例えばちょっと太ったときには「最近、お元気そうですね」とおっしゃるので、「マズいな」と思ったり。逆に、自分では見られないので変化に気づきにくい背中を「シュッとしましたね」と褒められたりすると、よし、と思いますね(笑)。仕事に関しても体型に関しても、聞く耳を持つことを大切にしています。
《石黒賢さんプロフィール》
1966年生まれ。俳優、児童文学翻訳家。1983年ドラマ『青が散る』で主演デビュー。以来、映画・ドラマ・舞台・ラジオなど多方面で活躍。その他、絵本の翻訳、ナレーションをはじめ、12年より「ウィンブルドンテニス」(WOWOW)のスペシャルナビゲーターを務める。舞台「7本指のピアニスト」(7/24〜7/31サンシャイン劇場)、「脳内ポイズンベリー」(8/26~東京・明治座、9/10~大阪・クールジャパンパーク大阪WWホール)に出演。
《衣装クレジット》
プルオーバーシャツ ¥29,700(コロニークロージング/バインド ピーアール)カットソー ¥19,800(フェデリ/トレ メッツォ)
《問い合わせ先》
バインドピーアール ☎03-6416-0441
トレ メッツォ ☎03-5464-1158
撮影/曽根将樹(PEACE MONKEY) ヘア・メーク/青木理恵(art factory inc.) スタイリスト/寳田マリ 取材/中田ゆき 編集/浜野彩希
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2024年12月16日(月)23:59まで
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